大判例

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東京高等裁判所 昭和63年(ラ)208号 決定

抗告理由は要するに、相手方及び抗告人らは亡森田鋭吉(以下、「鋭吉」という。)の相続人であり、抗告人らはその相続財産につき各一六分の一の遺留分を有するところ、抗告人らは右遺留分に基づき相手方に対し、相手方が鋭吉の遺書(全財産を相手方に相続させる旨の遺言)によって指定された相続分を減殺する旨の意思表示をしたから(以上の事実は抗告人ら提出に係る本件疎明資料によって認めることができる。)、抗告人らが鋭吉の相続財産である本件不動産について各一六分の一の共有持分を有することは明らかであり、本件申請を却下した原決定は不当であるから取り消されるべきである、というのである。

しかしながら、右認定の事実によれば、右減殺の意思表示は右遺言によって指定された相手方の相続分を減殺したもの(いわゆる相続分の指定の減殺)であるから、これにより抗告人らは鋭吉の相続財産につき各一六分の一の相続分(抗告人らのいう抽象的相続分)を有することになったというべきであるが、右減殺の意思表示により、抗告人らが特定の相続財産すなわち本件不動産についてその主張する共有持分を確定的に取得したかどうかは、右事実のみから当然に明らかであるとはいえない。すなわち、抗告人らが右減殺の結果、本件不動産につき確定的に所有権(その主張する各共有持分)を取得したというためには、抗告人らは、鋭吉の相続財産の範囲及びその総額を明らかにし、抗告人らが現実に得た相続利益と抗告人らが有する遺留分の割合によって算出された相続財産額とを比較して抗告人らの遺留分が侵害された割合を求めた上、右割合と抗告人らが本件不動産について主張する共有持分の割合が一致することを明らかにしなければならないというべきである。しかるところ、抗告人らは、これらの点について何ら具体的に主張し、立証するところがない。

そして、遺留分に基づく減殺を登記原因とする所有権(共有持分)移転の登記(仮登記を含む。)は、その登記原因に係る物権の変動が確定的に生じた場合になされるべきものであるから、前記のとおり、抗告人らが本件不動産について確定的に所有権(共有持分)を取得したことについて何ら具体的に主張し、立証しない以上、本件申請については、その申請に係る仮登記原因につき疎明がないものといわなければならない。

もっとも、抗告人らの前記主張は、抗告人らが本件不動産につき各一六分の一の共有持分を有することはいまだ確定していないが、右減殺の結果、抗告人らが鋭吉の相続財産につき各一六分の一の相続分(抗告人らのいう抽象的相続分)を有することは明らかであるから、そのことを登記によって公示する必要上本件申請に及んでいると主張するものとも解されるが、そうだとすれば、そのような登記は、減殺を登記原因とするものではなく、相続登記(いうまでもなく登記原因は相続)又はその更正の登記(仮登記を含む。)を申請することによって実現すべきものであって、特定不動産に対する減殺請求の場合それによって確定的な物権変動を生じたものとして所有権移転登記がなされるとしても、本件の場合、叙上説示のとおり、減殺による物権変動が確定的に生じていない以上、それを登記原因とする所有権(共有持分)移転の登記を認めることはできないというべきである。

(渡邉 大内 土屋)

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